交通事故からの経緯

2.相手側弁護士とのやりとり

健仁君が亡くなって10日後、相手側の弁護士から文書が届く。
一方的に健仁君の過失を主張する内容が、疲弊しきった児島さんに追い打ちをかける。

相手側弁護士の手紙(一通目)

前略

突然書面を差し上げる失礼をお許しください。私は大阪弁護士会所属の弁護士ですが、このたび、ヤマト運輸株式会社ならびにYより依頼を受け、本年五月一五日午前九時一〇分ころ生駒市西松ヶ丘二番二九号先路上で発生した交通事故(以下「本件事故」といいます。)に関し受任しましたので、この旨ご通知申し上げるため、本書を差し上げました。
まず最初に、本件事故でご子息がお亡くなりになられたことに対し心よりお悔やみ申し上げます。
もっとも、私としては、本件事故の一方当事者である運転手Yに過失はないと判断しています。
本件交通事故のあった道路は、Y側からいうと、右側に力ーブしており、見通しが悪いため、Yは、時速一〇キロ未満で進行していたと認識しています。
ご子息の原動機付き自転車が視界に入ったことから急制動の措置をとったものの、正面衝突を回避できなかったのであり、Yにとっては不可避の事故と考えています。
従って、あなた様には、Yに過失があったことを前提にヤマト運輸らに対し誠意を見せるようご要求ですが、これに応じることはできません。
問題を解決するためには法的措置をとっていただくほかないと考えています。
また、以上のようなことですから、今後は、会社関係者ならびにY本人が直接面談に応じることについてはご遠慮申し上げます。
なお、本件事故に関しお尋ねになりたいことがあれば、当職までご連絡ください。
ご連絡いただいた際、当職不在のときは、連絡先を伝言いただければ後ほど私の方から連絡を差し上げます。
また、お答えすべきことがらについては、調査の上改めてご返事致します。
まずは、用件のみ申し上げて失礼いたします。

相手側弁護士の手紙(一通目)への返信

前略

貴殿よりの書面を受け取りました。私共の長男健仁が5月15日に事故に遭い、同月29日の朝に亡くなりますまでの15日間、私達はもう身も心もぼろぼろになりました。
貴殿の書面では加害者には過失はないとあり、あたかも事故は建仁の一方的責任であるかのような主張であり、到底承服出来ません。今は詳細な反論はいたしませんが必ず真相を究明しヤマト運輸とY運転手の責任を明らかにしてまいる決意です。
私達は今は日々、息子を偲び、思い出せる限りのことを想い出し、健仁の生きた証しを、他の誰でもない親である私達が、しっかりと受け止め切ろうと、泣きながらでも毎日を生き続けている次第です。
亡くなりました息子の霊の前に、人として親として、務めを、最善を尽くすばかりです。
息子の霊前と事故現場に新しい花と水を絶やさず、一日一日をしっかりと健仁の魂と共に生き、彼の遺志を、世の人々の為に生かすべく、残りました者たちで引き継ぎ、精進してまいるつもりです。
それでは、これにて失礼いたします。

相手側弁護士の手紙(二通目)

私は9月23日付でヤマト運輸株式会社等代理人として書面を差し上げたものです。
先の書面で平成12年5月15日に発生した交通事故に関し、その解決のためには法的措置をとっていただく他ないと考えている旨申し上げましたが、法的解決の方法の一つとしてヤマト運輸側から訴訟を提起するということもあり得ます。
本書を差し上げたのは、このことをご説明申し上げるとともに、ご意向をお聞かせ願いたいと考えたからです。

さて、交通事故が発生しそれによって損害を受けるということがあり、なお当事者間で示談が成立しない場合、損害賠償を求める側が訴訟を提起するということが多いのですが、賠償を求める側だけが訴訟を提起しうるというものではありません。
反対に損害賠償を受けている者が、債務不存在確認訴訟を起こすことも可能です。
債務不存在訴訟というのは、例えば事故によって相手方からこれこれの金額の賠償を求められているが、そういう賠償金債務のないことの確認を求めるというものです。
ヤマト運輸株式会社としては、児島様からの訴訟提起を待って対応するというのではなく、積極的に上記のような訴訟を提起することも解決方法の一つとして考えております。
もし、児島様にご異存がなければ、そのように措置したしますので、ご意向をお知らせ下さい。
なお、仮にヤマト運輸側が訴訟を起こすとすると、児島様のご請求額を予め把握しておく必要があります。
もし、当方から訴訟の提起にご異存がなければ、ヤマト運輸側が支払うべき損害賠償額として児島様がお考えの額並びにその明細をお教えいただければ幸いです。

先の書面にも書きましたとおり、ヤマト運輸側は本件事故に関し過失はないと考えています。しかし、児島様が今回の事故についてどんなに心を痛めておられるかというのも少しはわかっているつもりです。
そして、そうだとすると、ただ児島様から訴訟が起こされるのをお待ちするのではなく、その結論はともかく一日も早く適正な法的解決を図るため、ヤマト運輸側としてできることはしなければならないと考え、本書を差し上げることにしました。ご理解賜れぱ幸いです。

まずは、要件のみ申し上げて失礼いたします。以上

追伸

本書面を起案した後、本件事故に関し自賠責事務所から照会があった旨会社の者から連絡を受けました。このことから考えると、あるいは児島様は、まず自賠責上の手続をし、しかる後当方への訴訟提起を考えておられるということになるのかも知れません。もし、そのように考えて間違いないとすれぱ、ヤマト運輸側としては、今しぱらく事態を静観する方がよいということになるのかも知れません。このことをも含め、ご連絡賜れば、幸いに存じます。

相手側弁護士の手紙(二通目)への返信

前略

貴殿よりの手紙(一二月一三日付は誤記でしょう)を受け取りましたが、はなはだ心外です。ヤマト運輸の担当社員からの電話がなくなりほっとしていましたが、今度は弁護士の貴殿からの次から次への郵便物で、遺族としては、何故こんなにも追い立てられるように急がせられねばならないのかと非常に怒りを覚えます。

加害者側からの訴訟提起など聞いたことはありません。私達は、今は真相解明が何よりも大事だと考えています。
警察の捜査が完了し、刑事処分がはっきりすれば当然損害賠償の請求をさせて頂きます。

まずは自賠責保険に対して被害者請求の手続きを行い、その後にヤマト運輸及びY運転手側に損書賠償請求する予定です。

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